引き続き障害年金と傷病手当金の調整につきまして。
今回は具体的な事例で考えてみたいと思います。
まず、障害年金の「障害認定日」は、原則として初診日から1年6月を経過した日とされており、この障害認定日が到来しないと、障害年金は請求できません。
ただし、これには例外がありまして、「障害認定日の特例」と呼ばれています。
たとえば、「 脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)」は、
① 機能障害を残しており、
② 初診日から起算して6か月経過した日以降において
③ 医学的観点からそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められる
ときに、症状固定として取り扱うことができるとされています。
その場合、「症状固定とされた日」が障害認定日となり、同日以降、障害年金を請求することができます。
症状固定により障害認定日が繰り上がったということは、その時点では「1年6月を経過していない」ので、傷病手当金をもらえる可能性があります。
一方、障害年金は、その支給が決定されると「請求月(=受給権発生)の翌月分」から支給が始まります。
やっかいなのは、「障害年金の審査判定にはおよそ3カ月ほどかかる」ことです。
障害年金の支給がすぐに決まるのであればよいのですが、請求書を提出してから数カ月間(支給されるかどうかもわからないまま)、収入がないまま生活を送るのはさすがに酷ですから、傷病手当金をもらいつつ、決定を待つことになります。
その後、支給が決まると「請求時点にさかのぼった数か月分の年金」がまとめて振り込まれますが、その中には傷病手当金と重複する期間分の年金も含まれており、この部分を返還することになるわけです。
このことを忘れて初回入金額を早々に使ってしまうと、いざ返還を求められたときに大慌て…
初めから重複分を差し引いて振り込んでくれればよいのですが、制度が異なるのでやむなし、というところでしょうか。
そのほかにも重複する要因はいくつもありますので、過去、同一の傷病について傷病手当金の支給を受けたことがあるかたは注意が必要ですね。
心配なかたは年金事務所などで相談してみるのもよいと思います。
それでは今日はこの辺で。